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newLISP で On Lisp する...第3章(その1)
(この blog は、“short short story または 晴耕雨読な日々”からの引越してきたもの。スクリプトは、newLISP V10.2.1 以降で動作するように書き直しています。)
今回は、第3章 関数プログラミング です。
まずは、関数型デザイン から。
最初から難問です。実は、関数として、bad-reverse が定義できないのです。実装という意味では、do も用意しましたし、この場合のrotatef に代わる 組込関数swap があります。let* もそれに代わる letn があります。記述は出来るのです。でも、動作しません。実は、newLISP では、関数に引数が渡される時点で、引数のコピーがとられ、コピーされた引数が関数に渡されます。つまり、引数を破壊する関数は書けない。どうです、まさに関数プログラミング向けといえるのでは。
前置きが長くなりましたが、見てみましょう。
(psetq、hayashi、defun、i+、i- は、newlisp-utility.lsp に定義してあります)
(context 'do) (define-macro (do:do) (letex (_init (map (hayashi slice 0 2) (args 0)) _steps (cons 'psetq (flat1 (map (hayashi select '(0 2)) (args 0)))) _results (cons 'begin (rest (args 1))) _end-test (first (args 1)) _body (cons 'begin (2 (args)))) (let _init (until _end-test _body _steps) _results))) (context MAIN) (defun bad-reverse (lst) (letn ((len (length lst)) (ilimit (/ len 2))) (do ((i 0 (i+ i)) (j (i- len) (i- j))) ((>= i ilimit)) (swap (nth i lst) (nth j lst)))))
動作はというと、
> (bad-reverse lst) nil > lst (a b c)
戻り値は逆転していますが、元々の lst は変わっていません。
と言っても、関数でかけないのであって、マクロでなら書けます。
(define-macro (badm-reverse) (letex (_lst (args 0)) (letn ((len (length _lst)) (ilimit (/ len 2))) (do ((i 0 (i+ i)) (j (i- len) (i- j))) ((>= i ilimit)) (swap (nth i _lst) (nth j _lst))))))
letn 以降は、変数_lst を使っている以外、関数定義と一緒です。
動作は、
> (badm-reverse lst) nil > lst (c b a)
この通り、lst の中身が変わっています。
さて、good-reverse の方に。こちらは、labels が定義されているので簡単です。
(labels、car、cdr、null は、newlisp-utility.lsp に定義してあります)
(defun good-reverse (lst) (labels ((rev (lst acc) (if (null lst) acc (rev (cdr lst) (cons (car lst) acc))))) (rev lst '())))
動作にも、問題はありません。
> (setq lst '(a b c)) (a b c) > (good-reverse lst) (c b a) > lst (a b c)
より良い関数型プログラミングを目指すためには、newLISPはうってつけ?
push、pop のように副作用がメインの関数もありますけどね。
ちなみに、newLISP の組込reverse は、戻り値と同じように元のリストを破壊します。
> (setq lst '(a b c)) (a b c) > (reverse lst) (c b a) > lst (c b a) > (reverse (copy lst)) (a b c) > lst (c b a)
破壊したくない時は、引数を copy して渡します。他の破壊的関数も同様です。
さて、Common Lisp の nconc は、newLISP では extend に相当します。
しかし、第二引数以降まで副作用を起こす意味では、マクロが必要です。
(context 'nconc) (define-macro (nconc:nconc) (letex (_lst0 (args 0) _det1 (> (length (args)) 1) _rest (cons 'nconc (1 (args)))) (if-not _det1 _lst0 (extend _lst0 _rest)))) (context MAIN)
extend と nconc との違いは、
> (setq x '(1) y '(2) z '(3)) (3) > (extend x y z) (1 2 3) > (list x y z) ((1 2 3) (2) (3)) > (setq x '(1) y '(2) z '(3)) (3) > (nconc x y z) (1 2 3) > (setq x '(1) y '(2) z '(3)) (3) > (nconc x y z) (1 2 3) > (list x y z) ((1 2 3) (2 3) (3))
となります。
さて、Common Lisp で、(nconc x y) と (setq x (nconc x y) の違いは、
[1]> (setq x nil y '(y)) (Y) [2]> (nconc x y) (Y) [3]> x NIL [4]> (setq x '()) NIL [5]> (nconc x y) (Y) [6]> x NIL [7]> (setq x (nconc x y) (Y) [8]> x (Y)
こういう場合のようです。
newLISP では、
> (setq x nil y '(y)) (y) > (nconc x y) ERR: list or string expected in function extend : nil > (setq x '()) () > (nconc x y) (y) > x (y)
となります。マクロnconc の代わりに組込extend を使っても一緒です。
newLISP の場合、組込の破壊的関数は、ほとんどの場合で副作用のために呼ばれます。
これも、Common Lisp との違いの一つかもしれません(笑)。
とは言え、副作用の使用を勧めている訳ではありません。
“On Lisp” に書いてあるように、ある程度の副作用は不可避です。
前述のように newLISP の関数定義では副作用を持てない分、組込関数で補っていると見るべきでしょう。
さて、CommonLisp にある多値の戻り値は、newLISP にはありません。だからといって、関数型プログラミングの妨げにはなりません。リストで返せばよいだけですから。
Common Lisp の多値を使った truncate と multiplue-value-bind の newLISP での実装は、前回、既に済ましましたので、関数powers の例だけ示します。
> [cmd] (defun powers (x) (values x (sqrt x) (pow x 2))) (multiple-value-bind (base root square) (powers 4) (list base root square)) [/cmd] (lambda (x) (values x (sqrt x) (pow x 2))) (4 2 16)
Common Lisp の exprt は、newLISP の組込pow の相当します。
さて、長くなってきたので、命令型プログラミングの裏返し からは、次回に。
以上、如何でしょうか?
newLISP で On Lisp する。。。第1章
(この blog は、“short short story または 晴耕雨読な日々”からの引越してきたもの。スクリプトは、newLISP V10.2.1 以降で動作するように書き直しています。)
(”On newLISP” は、“On Lisp”のスクリプトを newLISP で実装してみようという、試みです。経緯は、こちらでどうぞ。)
“On Lisp” は説明するまでもなく、Paul Graham氏の名著です。私はこれを読んで Lisp を始めました。私が持っているのは、野田開氏訳の日本語翻訳本(ISBN978-4-274-06637-5)です。Web上で見ることが出来ますが、願わくば、購入されますように。それだけの価値はあります。
では、“第1章 拡張可能なプログラミング言語”から。特に断らない限り、CommonLisp の動作は、xyzzy での動作です。
“Lispの拡張” にあるスクリプトは、Common Lispにとっては、特に目新しいスクリプトはありません。
; スクリプト1 (mapcar fn (do* ((x 1 (1+ x)) (result (list x) (push x result))) ((= x 10) (nreverse result))))
しかし、newLISP にとっては、厄介なスクリプトです。do* がありませんからね。いきなり大物マクロを組まなくてはいけません。
その前に、注意点。newLISP では、fn は組込関数です。Arc のように、lambda と同じ機能です。newLISP では、mapcar は map に、nreverse は reverse に相当します。関数1+ もありませんので、関数i+ を用意します。’i+’ なのは、関数や変数に ‘1+’ という名前が使えないこと。これは仕様なのでしかたありません。
前置きはさておき、do* の実装です。xyzzy reference.chm の do* 項を参考に作りました。
; スクリプト2 (define-macro (do*) (letex (_init (map (hayashi slice 0 2) (args 0)) _steps (cons 'setq (flat1 (map (hayashi select '(0 2)) (args 0)))) _results (cons 'begin (rest (args 1))) _end-test (first (args 1)) _body (cons 'begin (2 (args)))) (letn _init (until _end-test _body _steps) _results)))
中ほどの letn は、Common Lisp では、let* に相当します。これを let に変え、newLISP 版 psetq を用意すれば、do のマクロになります。その、実装例は、こちらにあります。hayashi と flat1 は拙作です。newlisp-utility.lsp に定義してあります。
先ほどの、注意点を含めスクリプト1を newLISP 用に書き直すと、
; スクリプト3 (define mapcar map) (define nreverse reverse) (define (i+ x) (+ 1 x)) (mapcar fn (do* ((x 1 (i+ x)) (result (list x) (push x result))) ((= x 10) (nreverse result))))
これで、動きます。
(i+ は、newlisp-utility.lspで macro定義してあります。newlisp-utility.lsp を先にロードしている場合は、i+ の定義をコメント・アウトして下さい。)
実際動作させてみると、
> [cmd] (define mapcar map) (define nreverse reverse) (define (i+ x) (+ 1 x)) (mapcar (fn (x) (* 2 x)) (do* ((x 1 (i+ x)) (result (list x) (push x result))) ((= x 10) (nreverse result)))) [/cmd] (2 4 6 8 10 12 14 16 18 20) >
さて残り、map1-n は、第4章で実装する予定です。
for は、newLISP 標準関数なので、実装しないかも(笑)。
実のところ、数字の 1 から 10 までのリストを作るだけなら、newLISP では 組込sequence を使えば、一発で済みます。
> (sequence 1 10) (1 2 3 4 5 6 7 8 9 10)
つまり、map1-n の実装は超簡単(笑)。
ということで、今日のまとめです。
- newLISP で、do と do* は実装できます。
- newLISP では、fn は組込関数なので変数名に使えません。
- newLISP では、mapcar の代わりに map を使用します。
- newLISP では、nreverse の代わりに reverse を使用します。
- newLISP では、let* の代わりに letn を使用します。
- newLISP では、名前の先頭に数字が使えません。(記号+、- と数字の組み合わせも不可です)
一番の問題は、最後の項目でしょうか。私にとっては、致命的でないですけどね。
さて、newLISP が、第1章のタイトル “拡張可能なプログラミング言語” であることは、間違いのないところ。そして、章の最後の問いは、“いつ Lispか?” 。ということで、この blog の締めには、次の問いを。
いつ newLISPか?
私のお薦めは、こうです。
newLISP V.10.2.8 から
以上、如何でしょうか?